『データで読み解く「生涯独身」社会』 (宝島社新書 2019/7/29 天野 馨南子)から現代の結婚における現実を確認します。
データに基づいた内容になりますので世間一般で持たれているイメージと違っているところがあると思います。平均初婚年齢は厚生労働省の人口動態調査(2017年)では平均初婚年齢は男性31.1歳、女性29.4歳となっています。平均がそれくらいでまだ周りも結婚していないしまだ若いから今すぐに結婚するつもりはない、と考えている方は必見です。
婚活版「アリとキリギリス」
夏の間にせっせと働いて食糧を貯めたアリは何の不自由もなく冬を過ごす、夏の間に遊んでいたキリギリスは冬に食べるものがなくて困ってしまう。計画をたてたり常日頃からの準備の大切を説いた寓話です。婚活においてもこのアリとキリギリスと同じ状況になっているというデータが紹介されています。
国立社会保障・人口問題研究所の第15回出生動向基本調査では独身者を18~24歳と25~34歳の2つのグループに分けてそれぞれ独身でいる理由を聞いています。男女別にトップ3をまとめました。
18~24歳 | 25~34歳 | |
男性:1位 | まだ若すぎる | 適当な相手にめぐり合わない |
男性:2位 | 仕事(学業)に打ち込みたい | まだ必要性を感じない |
男性:3位 | まだ必要性を感じない | 結婚資金が足りない |
18~24歳 | 25~34歳 | |
女性:1位 | 仕事(学業)に打ち込みたい | 適当な相手にめぐり合わない |
女性:2位 | まだ若すぎる | 自由や気楽さを失いたくない |
女性:3位 | まだ必要性を感じない 適当な相手にめぐり合わない | まだ必要性を感じない |
いかがでしょうか。若いグループでは「まだ若すぎる」や「仕事(学業)に打ち込みたい」といった自分の意思で結婚をしていないという理由が上位に来ていますが、平均初婚年齢の30歳前後のグループでは「適当な相手にめぐり合えない」や「結婚資金が足りない」など外部の要因で結婚したくてもできないということが示されています。
学生時代を含めた若い年齢から「一期一会」とばかりにアリのようにコツコツとパートナー探しをしている人は、早々に結婚、あるいは長年付き合った人と結ばれていく。ところが、キリギリスのように「今は楽しければいいや。面倒くさい関係は無理。もっといい人がいるはず」と、パートナー探しを怠っていると、アラサーという”冬”が訪れたときには誰も相手が見えなくなってしまっている。
このような恐ろしいストーリーが用意されています。
大学の進学率が50%を超え、先ほどの調査の若いグループの人たちの多くは学生です。最終学歴のマジョリティが高卒だった時代からすると、学生というのは18歳未満となり男性はそもそも結婚できる年齢ではありません。そうすると学生のうちに結婚を考えるということはごくまれだったでしょう。これが現在まで続き、年齢のことは度外視され、学生のうちは結婚について考えるのはまだ早いという風潮だけが現在も残っています。
このような社会背景があるため、アリのように学生時代から婚活にいそしむ方はほとんどいません。結果的に学生時代からの恋人と結婚する方はいてもその時から結婚を意識した付き合いをしていた方は多くはないでしょう。実際、結婚相談所の会員をみても女性は少数ですが学生の方はいるものの、男性は安定した収入がないと入会できないのでそもそも学生はいません。
日本人は真面目な性質の方が多いですが、こと婚活に関しては無意識のうちにキリギリス的行動をとってしまっているのです。
男だから結婚は30過ぎてからでも大丈夫は危険
女性は妊娠・出産があるから結婚は早い方が良いけれど、男性は直接子供を産むわけではないし歳を重ねた方が魅力が出るから遅くても大丈夫、このように思っている方は多いのではないでしょうか。これには2つの誤解があります。1つ目は男性の生殖機能も年齢とともに衰えていくため、子供を欲しいと思うならば男性も早いうちに行動を起こした方が妊娠の確立があがるいうことです。そして2つ目は男性も年を重ねると結婚相手としての魅力が減少していくということです。
1つ目に関しては日本生殖医学会のwebサイトなどでも男性の加齢が不妊症や流産に影響することが紹介されています。2つ目に関しては次のようなデータが紹介されています。
国立社会保障・人口問題研究所の第15回出生動向基本調査では結婚相手に望む年齢に関するデータもあり、男性が結婚相手に望む年齢は0~2歳年下で半分以上となっており、同年代の女性と結婚したい男性が多数であることがわかります。世代が変われば価値観も変わるので、年の近い人と結婚したいと思うのは自然な考えでしょう。では、実際の婚姻状況を平成27年の国勢調査からみると女性の20代30代の未婚率は、20~24歳は91%、25~29歳は61%、 30~34歳は34%、35~39歳は23%となっています(男性の未婚率は 20~24歳は95%、25~29歳は73%、 30~34歳は47%、35~39歳は35% )。 つまり実際に男性が30代になったときに同年代の女性と結婚しようと思っても7割以上は人妻であり、20代の時と比べて結婚の対象とすることができる絶対数が減少していることになります。
生涯未婚率(=50歳時の未婚率)においても男性24%、女性15%と男性の未婚率が顕著であり、男性が女性に対して行き遅れなどと揶揄できる立場ではないことがわかります。
タイムラグ式一夫多妻制
同年代で結婚するのが難しくても男性は年下の女性と結婚することができる、という考えをもっているかもしれません。しかしこの考えも簡単に実現できるものではありません。先ほどの結婚相手に望む年齢の調査を女性側の視点から見ると、女性が結婚相手に望む年齢は0~2歳年上が半分以上を占めています。 男女ともに同世代と結婚したいという強い意識があり、男性だから年下の女性と結婚できるというものではないのです。
しかし、現実には年の離れた女性と結婚をしている男性もいるわけなのですが、これにはからくりがあります。
初婚男性が7歳以上年下の初婚女性と結婚している割合はかなりのレアケースで、11%となっています。しかし、これが再婚男性となると、7歳以上年下の初婚女性が44%を占めています。
厚生労働省の「平成27年 人口動態統計」より筆者はこのようなデータを示しています。当然のことながら日本は一夫一妻制です。ただし、これは同時に複数の妻を持つことができないということで、男性が再婚した場合には2人の妻(1人は元妻)がいるわけです。このことを筆者は「タイムラグ式一夫多妻制」と呼んでいます。
このタイムラグ式一夫多妻制こそが男女の未婚率の差を生み出す原因となっています。婚活市場において歳の離れた年下女性と結婚する確率が高いのはあくまで再婚男性に限定した話なのです。
まとめ
現代の結婚における現実を紹介しました。
周りの男性でもやはり20代のうちに結婚するのは早すぎる、もっと自分の自由の時間が欲しいし遊びたいから結婚はまだいいや、30代になってから婚活を始めるよ、という方が大勢います。しかし上に示したような現実から、少しでも結婚したいという意識があるのならばすぐにでも行動を始めるべきでしょう。
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