『「生涯独身」社会』より、親子同居は結婚しにくい!?

『データで読み解く「生涯独身」社会』 (宝島社新書 2019/7/29 天野 馨南子)から、成人してからも親と同居している方は結婚しにくいのかどうかみていきます。

義父母とのコミュニケーションをとる必要があったり、二人きりで過ごす時間が取れない、両親の介護を直接的にする必要が出てくる、などの理由から親と同居している方は結婚相手として敬遠されるイメージがあるかもしれません。しかし、今回はこうした外部要因ではなくて、親と同居している本人に焦点を当てて結婚による環境の変化とともに考えていきます。すでに親と離れて暮らしている方は親と同居していた時のことを思い出しながらご覧ください。

お金がない人こそ結婚すべし

親との同居について考える前にまず始めに一人暮らしと同棲(相手は問わず)について考えてみたいと思います。

結婚願望はあるけど今すぐには出来ない、という方の中には給料も低くて貯金もないから今のままだと結婚できないと考えている方がいます。しかし、このような方こそ信頼できるパートナーを見つけて結婚(同棲)をするべきなのです。賃貸アパートの家賃だけを考えた場合が一番わかりやすいです。一人暮らしで8万円の物件にそれぞれ別に住んでいると合計16万円が居住費としてかかりますが、二人で一緒に暮らすことにすれば16万円未満の物件ならば別々に暮らすよりも節約することができます。別の言い方をすると今と同じ金銭的負担で賃料が2倍の物件に住むことができるのです。

その他にも照明やエアコンなどの電気代も同じ空間にいれば半分になりますし、インターネット回線なども半分で済むでしょう。OECD(経済協力開発機構)で用いられている生活コストの算出方法によると、一人のコストが1だとすると二人の場合は「1+1=2」ではなく「1+1=√2(≒1.41)」であることが紹介されています。このように結婚(同棲)することで現状よりも生活の質は向上します。

メイドとパトロン

もちろん結婚の目的は金銭的なものだけではありませんが、このようなメリットがあるにも関わらず2019年の国勢調査では生涯未婚率が男性23%、女性14%とここ30年ほどで急激に増えています。先ほど述べた結婚(同棲)のメリットというものはあくまで一人暮らしと比較した場合のものになります。

筆者は親と同居することによって享受できる恩恵について次のような例を挙げています。

●料理、掃除、洗濯——母親が「”超”察しの良いメイド」として代行

●ゴミ出し、苦情対応などの近所付き合い —— 主に母親が当然のように代行

●不動産コスト(住居費、光熱費) —— 主に父親が不動産パトロンとして支払うのでゼロ

●移動(ガソリン代) —— 父親が無料レンタカー店として機能(しかも自分で買う場合よりも高級な車が使える)

家に生活費としていくらか収めているとしても、同等の出費で二人暮らしをするよりもはるかに質の高い生活が送れる場合が高いのが親との同居です。これに他の兄弟も同居していたり、祖父母とも一緒に暮らしている場合にはより自分自身の生活のための金銭的コストは低くなります。

このような状態ですと結婚というのはむしろ今よりも趣味や貯金に回せるお金が少なくなり、結婚して一緒に暮らすということがデメリットとなってしまうのです。

親の死後

では親と同居している方にとっては結婚は金銭的デメリットがあるからしない方が良いのかというとそういうことでもありません。当然両親の方が子供よりも年が数十歳上なわけですから、一般的には先になるなることでしょう。そうなった場合に突如として独り暮らしを迫られる状況になってしまいます。

本の中では明治安田生活福祉研究所(2017)「35~54歳の結婚意識に関する調査」のデータが示されています。その中では一度結婚しないと決意した方でも年齢を重ねると考え方が変化する様子がわかります。

ところが、そんな未婚男女も、45歳以上になると考え方が変わってくるグループが現れる、という興味深い回答結果が存在します。45歳というと、親が70代に入り始め、自らの老いも感じられるようになってくる年齢です。

つまり、男性の46.7%、女性の47.4%が意思を翻していることがデータからは読み取れます。「もう一生結婚しない」と決意したとしても、「やっぱり結婚したい」と半分もの人が思い直すようになるようです。

決意を翻す理由としては、「老後1人で生活することが不安になったから」という回答が最も多くなっています。

しかし、このような状況になってからいきなり結婚相手を探すのも非常にハードルが高いです。何しろ結婚相手に求めるものは前に述べたメイドとパトロンの両方を兼ね備えた人物となってしまうためです。これでは見つかるはずの結婚相手も見つけることができません。

まとめ

成人してからも親と同居している方は結婚しにくいのかどうかについてみてみました。

自分自身の親が健康で現役で仕事をしている間は大きな問題とはならないかもしれませんが、今一度親の死後の生活も考えてみてください。もちろん一人で暮らす、友人と暮らすなどの選択肢もありますが、少しでも結婚を考えているなら自由に動ける今の段階で婚活の一歩を踏み出しましょう。

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